京都 科学を説明、対話力磨く 京大が独自トレーニング

2016年03月23日

京都 科学を説明、対話力磨く 京大が独自トレーニング

京都 科学を説明、対話力磨く 京大が独自トレーニング

再生医療や原発など科学技術が社会に及ぼす影響が増している。一方、複雑な実験や膨大な知識を駆使した研究は「難しくて分からない」と市民から敬遠されがちだ。その溝を埋めようと、京都大など全国の大学や研究機関で、研究者に科学の可能性と限界を伝える力を養ってもらうという動きが広がっている。現場を訪ねると、研究者が工夫を凝らし対話術を磨いていた。

 「2人一組で互いに別の地図を持ち、目的地への道筋を共有しましょう」。京都市左京区の京都大物質?細胞統合システム拠点(アイセムス)本館。研究紹介を通して市民と語り合う「アイセムスカフェ」を翌日に控え、加納圭准教授や水町衣里研究員が、研究者5人に対話力トレーニングを説明した。

 ペアの一方は正しい地図を持ちゴールを知っている。ゴールを知らず建物など一部の情報がない地図を持つ相手に、言葉だけで道筋を教えようと挑戦する。5分間試みたが、どのペアも成功しなかった。「市民と研究者も持っている“地図”は違います」。加納准教授が解説した。

 科学は発展に伴い専門分野の細分化が進み、市民が理解することは難しくなった。一方、研究成果の社会への還元を求める声は大きくなっている。異なる「地図」を持つ市民と研究者が、一緒に望ましい道筋を探るきっかけを作るのがトレーニングの狙いだ。

 2011年度から実施し、ジェスチャーを有効に使う▽科学者も学ぶ姿勢を示す▽異なる社会的関心を理解する?といった52項目に及ぶ技術を明確化するなど、改善を重ねてきた。12年度からは総合研究大学院大や広島大など他研究機関にも提供している。

 翌日のカフェには市民17人が参加した。研究者が各机で自らの研究を説明し、科学を語り合った。終了後には検討会も行った。初めて参加した小林克彰アイセムス助教は「背景の違う人たちに説明するのは容易ではない。対話力を身に付ける意識の重要性が自覚できた」と話した。



kyoto00glo at 06:07|PermalinkComments(0)