京都 3.11後の夢、手記集め本に 京都の出版社

2016年03月17日

京都 3.11後の夢、手記集め本に 京都の出版社

京都 3.11後の夢、手記集め本に 京都の出版社

東日本大震災 311

 東日本大震災から5年の節目に、被災者らが震災後に生まれた夢をつづった本「3・11からの夢」を、京都の出版社が発行した。制作を担当した編集者の女性は、2年間で26回、延べ156日現地に入り、今も続く絶望のなかで前を向こうとする人たちに手記を依頼した。「被災地に関わりのない人にも、自分の生き方を考えるきっかけにしてほしい」と話す。

 制作したのは、「いろは出版」(京都市左京区)の末永光さん(24)。大阪府寝屋川市出身で大学2年だった震災当時は「何もできなかった」が、2014年春に入社して現地に通い、「被災地の人たちが希望を持てるきっかけをつくりたい」との思いで、夢の手記を集め始めた。

 登場するのは、6歳?87歳の30人。震災孤児となった大学生の阿部真奈さん(21)は、母の遺体が見つからないときの絶望感やラジオ放送のボランティアを経験してアナウンサーを目指した心の変化に触れながら「忘れられないために伝える仕事をする。『被災者』ではない私になりたい」と書く。「陸前高田を復興の象徴にする」夢を掲げた陸前高田市の戸羽太市長(51)は、家族よりも市長の使命を優先したときの心の葛藤や、妻の遺体を前に「俺は人として間違っていたのかもしれない」と何度もわびた経験をつづった。

 このほか、「福島をもう一度みんなでつくりたい」(福島の母親)、「この海で三陸の誇りを担っていく」(家も会社も流されたホタテ屋2代目)「当たり前の生活」(仮設住宅から新居に引っ越したおばあちゃん)「やきゅうせんしゅになるよ」(震災当時1歳だった男の子)などの夢が笑顔の写真とともに紹介されている。

 「3年間被災地に関わりもせず傷口に塩を塗るな、と支援者に言われ、人と話すことが怖くなったときもある」という末永さん。何度も挫折しかけたが、「夢について聞かれたのは初めて」「希望の宿題をもらったみたい」という被災者の言葉に勇気づけられたという。「5年間必死で生きてきた人がいる。自分はどうか、と見つめ直す一冊になればうれしい。私のように震災に向き合い切れなかった人にも読んでもらえれば」と話す。


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