京都 被災地の大漁旗、洋服に再生 京都から移住のデザイナー

東日本大震災 311

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 東日本大震災をきっかけに、津波被害を受けた宮城県石巻市に京都市から移り住んだデザイナーの男性がいる。大漁旗を素材にした洋服やアクセサリーを作り、職を失った主婦たちを雇って経済的、精神的な自立を支援。震災から5年を迎える被災地の復興を後押ししている。

 田中鉄太郎さん(38)。東京都出身で、2009年に右京区太秦を拠点に日本をテーマにした服飾ブランドを立ち上げた。委託販売などが軌道に乗り始めた2011年3月11日、震災が起きた。

 「自分は十分に生活できている。東北の力になりたい」と、一足先に石巻でボランティアしていた知人を追い、震災翌月に現地へ。がれきや泥の撤去に汗を流していたある日、倒壊した建物で大漁旗と出会った。

 大漁旗は、新しい船を買った漁師に、周囲が豊漁や安全を願う「祝い旗」として贈り、大漁で帰港する際に船上に掲げる。「大漁旗をがれきから『救出』した時、宝物を見つけたように感じた」。被災して漁を諦めた漁師たちから、300枚近い旗を譲り受けると同時に、気付くと京都の家を引き払っていた。

 1点もので色鮮やかな大漁旗のデザイン。「生地そのものの存在感」を生かし、洋服やバッグ、帽子、ピアスなど多彩な商品を展開する。震災で失業した主婦たちの生きがいづくりや経済的な自立を支えようと、現在は女性9人を雇用している。13年5月には、石巻市の中心部に店舗「FUNADE studio」を構えた。

 「お客さんの復興を支援する気持ちに甘えていてはいけない。震災から時間がたつほど、『いいもの』しか選んでもらえなくなる」と田中さん。京都のイベントでも出張販売を行い、好評を得たという。

 「被災者すべてが必ずしも弱者という訳ではない。行動すれば状況が変えられるということに気付き、新しい物を生んでいく人もたくさんいる。東北で面白いものが生まれていることを発信したい」