京都 妊娠時被ばく、母の悩み描く ドキュメンタリー公開

2016年03月03日

京都 妊娠時被ばく、母の悩み描く ドキュメンタリー公開

京都 妊娠時被ばく、母の悩み描く ドキュメンタリー公開

京都を拠点に活動するドキュメンタリー映画監督海南(かな)友子さん(44)が、自らの放射線被ばくと妊娠・出産を記録した映画「抱く(ハグ)(HUG)」が5日から京都シネマで公開される。自分自身を被写体として、東京電力福島第1原発事故が母子にもたらした痛みや苦しみ、この時代に母となることの意味をつづった作品。海南さんは「わが子を被ばくさせたかもしれないと自分を責め続ける女性がたくさんいる。私の姿を通して、彼女たちの気持ちを想像してもらえたら」と話す。

 海南さんは2011年4月、同原発がある福島県大熊町などで取材。原発から20キロ圏内の「警戒区域」に入り、4キロ以内にまで近づいた。取材中は線量計が鳴り続け、「毎時2300マイクロシーベルト」を示したという。

 高い線量下での取材を終えた直後、医師から妊娠4週目だと知らされる。あの時この子はおなかにいた。もし妊娠を知っていれば、福島に行ってなかったかもしれないのに?。強い後悔と不安、自責の念にさいなまれ、「これ以上子どもを被ばくさせてはいけない」と翌月、京都に住まいを移した。

 出産が近づくにつれ、原因不明の胸の痛みや吐き気に襲われるようになった。痛みと吐き気は臨月まで続き、放射性物質の影響を疑った。胎児に障害が出る可能性についても悩み続けた。

 映画は、妊娠が分かる直前から出産、子どもが1歳の誕生日を迎えるまでの約2年間の心の動きをつぶさに追う。長い懊悩(おうのう)の末、わが子とともに生き抜こうと決意する姿が印象的だ。

 13年に完成したが、公開する劇場や配給会社が決まらない。旧知の映画関係者に頼んでも断られた。「みな似たような理由だった。原発を肯定する人はたくさんいて、彼らからの反発や抵抗を受け止めきれないってことだったんだと思う」

 国内で公開できないまま海外の映画祭への出品が決まり、韓国、イタリアなど6カ国で上映。各国での高い評価を受けて今年、国内での公開が決まった。「震災と原発事故から5年たっての公開になったけど、それは逆に良かった」と海南さん。「あんなにすごい出来事だったのに、5年たつと忘れられかけ、(一部の原発では)再稼働もしている。『あの日』に感じた恐怖や不安を思い出し、次の20年、30年の『暮らしとエネルギー』を考える機会にしてほしい」と話している。



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