京都 重力波研究、尽きぬ興奮 重要性増す「かぐら」

2016年03月01日

京都 重力波研究、尽きぬ興奮 重要性増す「かぐら」

京都 重力波研究、尽きぬ興奮 重要性増す「かぐら」

ブラックホール同士が衝突した時に生じる時空の小さなゆがみ「重力波」を、国際実験チームが重力波観測装置「LIGO」で初めて観測し、世界中を驚かせた。日本でも重力波望遠鏡「かぐら」(岐阜県飛騨市)が2017年度から本格観測の予定で、研究への期待は高まっている。LIGOでの発見の意義と今後の見通しを知るため、かぐらによる観測に参加する京都大基礎物理学研究所の柴田大教授(天体物理学)を訪ねた。

■中性子星衝突分析、引力解明…夢膨らむ

 重さを持つ物体は、重力によって周辺の時空をゆがめ、物体が動くと「ゆがみ」がさざ波のように伝わる。これが重力波だ。柴田教授は「石が池に落ちた後、さざ波が伝わっていくイメージ」と説明する。重力波は、100年前にアインシュタインが一般相対性理論で予測していた。

 重力波は光速で伝わり、すべての物質を貫通する。しかし重力波による時空のゆがみはわずか。太陽と地球の間で原子1個分のゆらぎを検出しなければならず、大規模で精密な観測装置が必要となる。LIGOは、レーザー光を直角に交差させて照射。それぞれ4キロ離れた場所にある鏡で反射させ、戻ってくる時間のずれから重力波を検出した。

 発生源の性質は重力波の波形を分析すると分かる。観測できた波形を分析したところ、13億光年離れた場所にあるブラックホール同士の衝突だと分かった。しかし、LIGOだけでは方向を特定することはできない。「日本のかぐらとLIGOで協力すれば、より詳細に方向が分かる」と柴田教授。重力波の観測成功で、かぐらの重要性は増しているという。

 ブラックホールのように重力の強い物体同士がダイナミックに動くと、観測可能な重力波が発生する。ブラックホール以外では、密度が太陽の百兆倍以上に上る中性子星同士の衝突もターゲットになる。中性子星の起源は、ブラックホールと同じ超新星爆発だ。超新星爆発は、質量の大きな恒星の最終段階だが、恒星の質量が一定より小さいと爆発後に中性子星となる。

 水素以外のすべての原子は原子核に中性子を持っている。しかし、中性子が引力を働かせて原子核の形を保つ仕組みには不明な部分も残っている。柴田教授は「中性子星からの重力波を検出すれば、中性子同士で働く引力の性質を解明できるかもしれない」と期待する。遠い宇宙での現象を調べることで、日常にある物質の秘密を解き明かせるのが天体物理学の魅力だ。

 重力波の観測成功で、アインシュタインの予測が正しいと示された。しかし柴田教授は「今後、重力波の観測を進めていくと、アインシュタインの一般相対性理論では説明できない現象が見つかるかもしれない」と話す。重力波天文学は、探究する興奮が尽きない時期に入った。



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