京都 CM映像、学術利用の道は? 時代映す内容、今なら炎上も

2016年02月24日

京都 CM映像、学術利用の道は? 時代映す内容、今なら炎上も

京都 CM映像、学術利用の道は? 時代映す内容、今なら炎上も

2000年代に入って本格化したテレビCM研究とその展望を考えるシンポジウムが京都市西京区の国際日本文化研究センターで行われた。研究者や広告業界の関係者らが、データベース化が進むCM映像資料の学術利用の可能性や課題を議論した。

 日文研では03年に共同研究会「コマーシャル映像にみる物質文化と情報文化」を開催、社会学やメディア史などさまざまな観点から1950年代に始まった日本のテレビCMの文化的価値を考察した。その後も関西の大学などに研究は広がり、映像の分析やデータベース化など知見の蓄積が進む。

 シンポでは高野光平茨城大准教授が「CM資料の発掘とその成果」と題して講演した。関西の研究者と共に、50?60年代の初期作品や、広告コンテストなどを受賞していない無名CMも集め、言葉や音楽、ファッションなど多様な切り口で分析した論集「テレビ・コマーシャルの考古学」を2010年に刊行した経緯を報告。成果を社会や次世代に還元する必要を指摘し「若者も古いものに関心がある。中高年向けの『懐かしい』という需要だけでなく、『今見て面白い』コンテンツとしての価値も実証すべき」と述べた。

 教育現場での資料収集や公開例も報告された。京都精華大は01年に制作会社「TCJ」から教育用に提供された初期CMのVHSテープを基に、京都で関西系企業のCMを作った「さがスタジオ」の作品なども加えたデータベースを構築、昨年にデータを立命館大アートリサーチセンターに寄託した。08年から大阪市立大や大阪新美術館建設準備室などが広告代理店「萬年社」のコレクションの調査研究を進め、02年開設の「アド・ミュージアム東京」は資料の検索性を向上させ、研究や教育に活用しやすいようリニューアル中だ。

 CMを研究や文化資源として共有するには、著作権や広告主、代理店などとの調整が難題としてある。また、かつて「私作る人、僕食べる人」といったCMキャッチコピーが差別的だと議論を呼ぶなど、広告は時代や文化を映す。発表当時は問題がなくとも、今の社会通念に合わない作品は、研究目的とはいえ公開すればネット上で「炎上」する恐れもあり、収集や分析の枠組みから外されてしまうこともありうる。

 こうした課題を乗り越え、作り手と受け手双方の視点で作品の文化的価値を解釈していくためには、産学連携が欠かせない。シンポを主催した日文研の山田奨治教授は「若い世代はテレビを見ないという人も多く、CM研究の成果をどう伝えるか、今後10年で考えていかなければ」と語った。



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