京都 山鉾どう回す?しば漬けなぜ赤い? 身近な理科に注目

2016年02月24日

京都 山鉾どう回す?しば漬けなぜ赤い? 身近な理科に注目

京都 山鉾どう回す?しば漬けなぜ赤い? 身近な理科に注目


 子どもの理科離れを食い止めようと、生活の中で起きる身近な現象を実験に取り入れる授業が注目されている。昨年12月に京都市内で開かれた全国小学校理科研究大会では、祇園祭の辻回しを題材にてこの原理を学んだり、しば漬けの色から酸の性質を考えるといった地元の題材を生かした授業が公開された。理科が役に立つことを実感させ、理系人材育成につなげる狙いだが、教材探しの難しさや教員の力量が課題になっている。

 小学6年生29人が、祇園祭の山鉾をイメージした重さ約10キロの模型に長さの違う棒を差し込み、どの長さだと楽に方向を変えられるかを試していた。12月4日、京都市下京区の洛央小で行われた研究大会での公開授業。てこの原理の単元で、最も小さな力で辻回しをする方法を考えた。

 別のクラスで題材に使ったのは、京都の伝統的な漬物のしば漬けだ。酸性やアルカリ性の液を使って赤じその色を変化させ、水溶液の性質が食品に利用されていることを学んだ。

 大会は全体主題を「実生活の中で科学する力を育てる理科教育」とした。テーマには子どもの理科への苦手意識を払拭(ふっしょく)しようという思いがある。

 文部科学省は現行の指導要領で、実験・観察を重視することで、身近な現象を理解させ、科学的な見方や考え方を養うことを掲げる。ただ、全面実施から5年経過後の今も成果は芳しくない。昨年4月、全国学力テストで3年ぶりに実施した理科では、実験や観察を基にした問題を意図的に多く出題したが、正答率は低かった。

 学力テストに合わせて行ったアンケート調査でも「理科の勉強が好き」と答えた小学6年生は83・5%いたが、「役立つ」と答えたのは73・4%で算数の90・4%や国語の88・9%に比べて低かった。「理科や科学技術に関する職業に就きたい」と答えた児童は28・9%にとどまった。

 京都理科研究会会長の山本泉・日野小校長は「実験や観察をただ増やすだけでは子どもは『理科が役立つ』と思ってくれないという結果だ。研究大会では生活の中の理科を意識させる授業を提案した」と話す。

 公開授業の内容を差配した洛央小の研究主任由良二郎教諭(44)は「授業後、爪切りやいすの高さ調整器具などにも、てこの原理が使われていることに気付き、友人同士で話していた」と手応えを語る。

 ただ、教材探しや準備に手間がかかるのが課題だ。同小では、全校あげて1年がかりで検討してきた。「理科の研究校だからできた」(由良教諭)のが実情だ。

 教員の苦手意識が大きいという実態もある。科学技術振興機構が実施した2010年度「小学校理科教育実態調査」では「理科の指導が得意」と答えた教員は7・5%。文系出身者が多く、日常生活の現象に理科の要素を発見する習慣が乏しいという見方もある。

 京都教育大の村上忠幸教授(理科教育)は「子どもに、身近な現象が理科で解決できると意識付けするには、授業だけでは限界がある。教科書の内容を教えていればいいという指導法そのものを見直す必要がある」と指摘している。



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