京都 関関同立+近 10年後の激変 関西有力私立5大学を徹底比較!

2016年02月12日

京都 関関同立+近 10年後の激変 関西有力私立5大学を徹底比較!

京都 関関同立+近 10年後の激変 関西有力私立5大学を徹底比較!

 関西の有力私立大学について、現状と未来をさまざまなデータで比較した。伝統の関関同立に加え、旬なのは、一般志願者数で日本一になった近畿大学。産近甲龍からは頭一つ抜け出して、4大学を猛追している。このまま背中をとらえるのか。それとも──。(編集部・古田真梨子)

 関西の有力私立大学と言えば、「関関同立」。長く、関西大学(関大)、関西学院大学(関学)、同志社大学、立命館大学の4大学が、他の私立とは一線を画すブランド大学として認知されてきた。

 しかし、この関関同立を猛追する大学が現れた。マグロの完全養殖に世界で初めて成功して名をはせた近畿大学だ。関関同立に次ぐ一群として、「産近甲龍(京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)」と括られていたが、ツイッターなどのSNSを駆使した広報戦略も奏功し、2014年には、一般入試の志願者数が明治大学を抜いて日本一となった。

 伝統の関関同立に近大を加えた5大学について、入試難易度、本命率、就職、授業料のデータと、立地や女子率、独自アンケートに基づくイメージで比較したい。

 まず、入試難易度から見てみよう。関関同立の入試難易度は、早慶上智の真ん中程度からMARCHと同等くらいまでのレベルに分布する。トップは不動の同志社。4位も、関大の指定席のようになっている。近大はワンランク下の感が否めないが、10年前と比較すると、その差を縮めている。

■立命館「減速」の理由

 目立つのは、立命館の減速だ。

 立命館は国際関係学部と法学部でそれぞれ大きく難易度を下げた。とりわけ、お家芸だったはずの国際関係学部が、関西圏のトップから転落していることは大きい。何が起きたのか。

 立命館は00年、留学生が在学生の半数近くを占める立命館アジア太平洋大学(APU)を大分県別府市に開校。グループ全体として、積極的にグローバル化を進めてきた。14年夏には、オーストラリア国立大学と「共同学士課程」を設置することを決定。海外大学と学士課程のカリキュラムを一から開発する国内初の取り組みに着手している。

 国の「スーパーグローバル大学(SGU)創成支援」にも、「グローバル化牽引型(タイプB)」で選出された。同大の陰山英男教授(教育学)は、

「常に時代の流れを先取りしてきたのが立命。特にマレーシアやインドネシアなど、東アジアに出張すると『おっ』とびっくりするくらい認知度がある。結果として、優秀な留学生が集まってきて周囲にいい影響を与えてくれている」

 と前置きしたうえで、難易度の変動についてこう話す。

「全国各地に付属校を設置するなど、地元以外からも幅広く学生を集めようとした結果ではないか。多くの受験生になじみができ、可能性を与えることができた。『入りやすい大学』に位置づけられたことで難易度が少し下がったのかもしれない」

 確かに、立命館は付属中・高校が大学本部から遠く離れた場所にもある。京都府長岡京市のほかに、1995年に同府宇治市、96年に北海道江別市、07年には滋賀県守山市にも開校。熱心に拡張路線を走ってきたことがわかる。

 知名度が上がった結果、難易度が下がるという皮肉な事態が起きているのだ。それはそのまま本命率の低さにもつながっている。立命館の本命率は、今回比較した5大学の中で最も低い35.3%。志願者数と合格者数の多さばかりが目立った。

 付属校は、大学の学生構成に直結する要素。小学校設置で見ると、関西は首都圏に比べて遅く、同志社と立命館が小学校を開校したのは06年。08年には関学、10年には関大がそれぞれ初等部を開校し、ここにきて「お受験」が盛り上がってきた。

■関大の初等部が人気

 名門幼稚園や小学校のお受験に特化した「アンテナ・プレスクール」(東京都渋谷区)の石井至校長に、付属小学校について聞くと、意外な言葉が。

「関関同立の小学校のカリキュラムを見ると、思考力育成プログラムを取り入れるなど一番魅力的なのは関大初等部。保護者の人気も圧倒的に高い。いまは、大学のレベルは関関同立の中で一番下かもしれないが、卒業生が大学生になる10年後には、大学そのものの評価が向上しているでしょう」

 10年後の勢力図を予想するうえで、重要なポイントと言えそうだ。実際、10年前と立ち位置が大きく変化し、親世代と現役学生のイメージが異なる大学がある。近大だ。

 02年、世界で初めてマグロの「完全養殖」に成功して以来、アンテナショップを出店したり、手軽にネットで出願できる「エコ出願」を始めたりと、話題に事欠かない。14年に、一般入試の志願者数が明治を抜いて日本一になったことはすでに述べた。

 入学式も名物イベントとして定着。今春は音楽プロデューサーのつんく♂さん(47)が声帯摘出を告白して話題になった。

広報部の世耕石弘部長は言う。

「『MARCH』『関関同立』は、いずれも語呂がいいこともあって価値観が固定化しているに過ぎない。古くさい大学の序列はやめてもらいたい。強いて言うなら、ライバルは学部数がほぼ同じ立命と関大です」

■就職は同志社と関学

 現役学生も勢いを感じているようで、総合社会学部3年の男子学生(21)は、

「関関同立に行きたかったけど、自分の実力では手が届いても関大。結局、落ちてしまったものの、迷いなく近大に来ました。元気で活気がある。近大を知らない人はいないし、最初から『悪くない』と思ってました」

 初年度の納入金は医学部を除いても、関関同立に比べて全体的に高い。コスパが良いとは言えないものの、関関同立に次ぐ地位を固めたことは間違いない。

 とはいえ、大学のブランド力が影響しやすい銀行や商社への就職においては、関関同立の存在感は揺るぎない。

 著書に『関関同立学』(新潮社、共著)があるルポライターの小嶋忠良さん(70)は、

「同志社は歴史が長く優秀で著名な卒業生も多い。関学には東の慶應義塾大学のようなスマートさがある。他大学がこの2校を凌駕するのは難しいでしょう」

 関西私立のトップに君臨する同志社にライバル校はどこか尋ねると「あえて挙げるなら地方国立大学」と回答がきた。

 同志社の視線は、世界にも向かう。米国の13のリベラルアーツカレッジが日本語教育をする拠点が学内にあり、日本人学生と連携した授業も実施しているほか、16年度には「グローバル教育センター」を設置。日本の伝統文化からラーメンに至るまで、幅広い教養を英語で学べるという。

 だが同志社は、立命館と関学が採択されているSGUからは漏れた。同志社広報課は、

「不採択でも、教養教育を英語でやるという同志社的特徴を出していきたい。留学生の受け入れも2500人を維持していきます」

 プライドをかけた取り組みが続く。

 首都圏と違うのは、キャンパスの立地があまりイメージに影響していないことだ。

■立地より雰囲気で選ぶ

 同志社と立命館は、立地としても人気のある京都の大学の最高峰だが、同志社の場合、理系学部を中心に約9千人が市内から約1時間離れた京田辺市にあるキャンパスに通う。立命館も滋賀県草津市や大阪府茨木市にキャンパスを構え、学部によっては決して「京都で」学べるわけではないことは周知の事実だ。

 関大のメインキャンパスも、大阪の中心部・梅田からは約30分。不便ではないが、誰もが憧れるおしゃれスポットではないし、関学も「神戸」とはいえ、中心部からは約30分。

 関関同立それぞれが府県をまたいで離れていることもあり、立地に関して言えば「どんぐりの背比べ」なのだ。

 大手進学塾、KEC近畿予備校の大学受験課責任者の佐々木俊幸さん(52)は、

「『どこにあるか』よりも、『とにかく関関同立に入ろう』という思いが先にくる」

 と受験生の思いを代弁する。

 では、関西の場合、難易度以外では何が決め手になるのか。

「自信のある子はやはり同志社を第1志望にする傾向はありますが、オープンキャンパスで感じた雰囲気で選ぶ子がとても多い」(佐々木さん)

 一昨年、関大を卒業した会社員の女性(24)は、各大学のオープンキャンパスに行き、関大を第1志望に決めたという。

「とてもいい天気だったんです。広い芝生がきれいで、楽しそうに見えて、『ここや』と。スウェットにクロックスのサンダルで歩いている学生もいて、力が抜けている感じがよかった」

 編集部が実施した大学のイメージを問うアンケートでは、関学に「美人が多い」「清楚でおしゃれ」という、首都圏では青山学院大学に近い答えが集中したが、実際に足を運んで肌感覚で大学を選ぶのが関西流なのかもしれない。

■「頭ひとつ抜けてます」

「もし◯◯するならどの大学?」というアンケートでは、同志社が圧勝。上司、部下、恋人、結婚、友達……。どんなシーンでもパートナーには同志社が選ばれた。法学部3年の男子学生(21)が、

「僕ら頭ひとつ抜けてますよ?というプライドがあります」

 と語るのもうなずける。

 注目は「部下にするなら」で近大が3位にランクインしたことだ。大学の勢いそのままに、バイタリティーがありそうだと期待する声が多かった。

 取材した5大学に共通するのは、おおらかな関西気質。自分のノリと合う大学に行くことが何よりの幸せなのだ。



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