京都 政治の「数字」どれが本当? 京都市長選、有権者戸惑い

一体、どっちを信じればいいの? 京都市長選(7日投開票)で、市政の現状や課題を表現した公約や政策ビラの数字をめぐり、激しい論争が起こっている。子育て環境や経済状況といった争点で、現職候補が「これだけ改善した」と言えば、「いや、その数字はまやかしだ」と新人候補が反論。有権者から戸惑いの声も聞こえる。

 「うーん、どれが本当なんだろうか」。下京区のアルバイト小林美幸さん(23)に、3候補の主張を比べた表を見せると、首をひねった。数字の根拠を説明をすると「どちらもウソじゃないんだろうけど、1人の訴えだけ聞いたら、勘違いしますよね」。

 現職の門川大作候補(65)=自民党、民主党、公明党、社民党府連推薦=が掲げる「2年連続で保育所待機児童ゼロ達成」。厚生労働省の調査が年度当初の4月時点を基準にしており、京都市では確かに同時点で「ゼロ」が続いている。

 これに対して新人の本田久美子候補(66)=共産党推薦=は、市が把握している昨年10月時点のデータを基に「1199人が入れなかった」と主張する。年度途中で入所を断られた人数に加え、希望の園に入れず辞退した人も「待機児童だ」として、国基準の数値に独自に足し算している。

 経済関連でも、門川候補は15年の企業倒産件数が157件と、ここ10年間では最少となったとの数字を使う。有効求人倍率も2009年平均の0・51から、15年12月は1・29に上昇したとアピールし、「関西で一番、求人の多いまちになってきた」と、景気回復の実績を伝える。

 一方の本田候補は事業所数の変動に着目し、09年から14年にかけて7854減少したと政策ビラに記載。非正規雇用者割合が43・7%と全国平均(32・8%)より高かったとの12年調査結果を基に、「非正規雇用の求人が増えただけ」と批判する。

 新人の三上隆候補(85)は公約に数字の表記はないが、貧困児童の無料給食を寺社の拝観税を財源に実施する、などと訴えている。

■見極めて投票を

 同志社大政策学部の真山達志教授(行政学)の話 マニフェスト選挙の浸透で、具体的な数字を挙げて訴えに説得力を持たせる候補者が増えている。好ましい面もあるが、候補者は、さまざまなデータから都合の良い数字だけを取り出してアピールする傾向があり、一面的な見方で有権者が説得される危険性も大きい。有権者は、数字が自分の感覚に合っているか、他候補はどんな数字を出しているか、しっかり見極めて投票すべきだろう。
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<京都市長選・争点を歩く>飽食の現代、おなかをすかす子ら 貧困児童救う施策を 伏見・キッズキッチン /京都

 京都市長選(7日投開票)の争点の一つになっている「貧困児童」対策。市内の現場を歩いた。

 「ソースとって」「先生、鼻でかいなあ」。子供らしい、元気で脈絡のない会話が、ほかほかのお好み焼きの上で飛び交う。

 1月23日昼、京都市の南端・向島ニュータウン(伏見区)であった「キッズキッチン」を訪ねた。子供たちにおなかいっぱい食べてもらおうと、近くの京都文教大有志や地元民生委員らが商店街空き店舗スペース「京都文教マイタウン向島(通称・MJ)」で2014年8月から月1、2回続けている企画だ。

 生活保護世帯や一人親世帯が多いとされる向島ニュータウン。共同代表の小林大祐・京都文教大総合社会学部専任講師は「今の時代にですよ」と前置きし、とつとつと語り出した。

 花見時期に公園で広げた弁当を物欲しげに眺める子供、夏休みになると給食がなくて痩せる子供、500円玉を握りしめてコンビニを訪れカップラーメンにお湯を満たして帰る子供……。それがニュータウンの風景の一部だという。

 キッズキッチンは子供から参加費を一切もらわない。少額でも出せず、参加できなくなってしまう恐れがあるからだ。MJ運営費やNPOの寄付を原資に続けてきたが、継続的かつ頻繁に開催するためにはしっかりとした資金源が必要だ。

 この日は小学生ら10人、スタッフは学生ら男女8人。初参加の京都文教大、池田陵弥さん(2年)は「暗い子供が多いかと心配したが、皆元気があって良かった」と話した。

 明るい表情でお手伝いをしていたある男児は、母子家庭で生活保護世帯という。母親は精神的に不安定で、幼い妹を保育所に送り届けるのも日々の男児の役割だ。「そんなにおいしくない」と憎まれ口をたたきながらも、「弟の分も持って帰らないと」と余ったお好み焼きを求めた。

 記者が見る限り、極端に痩せていたり、おなかをすかせ無心で食べている子供はいなかった。しかし、物資支援するフードバンク京都の高畠由美代表は「炭水化物ばかり食べても太るので(栄養が十分かは)見た目には分からない」と指摘し、「貧困児童のために、市内各地で有志が立ち上がれるようなサポートがあれば」と話した。小林さんは「児童相談所など行政は最悪の段階をカバーするが、『ちょっと避難する』場所は少ない。地域の継続的な活動を支援してほしい」。

 MJ前のスーパーにはお年寄りが出入りする姿が目立った。事情を知ってか知らでか「楽しそうね」。子供らの姿をガラス越しに見て、高齢女性がほほ笑んでいた。

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 厚生労働省の13年「国民生活基礎調査」によると、17歳以下の子供の貧困率は16・3%。6人に1人が貧困状態にある計算だ。また京都市内で就学援助を受ける市立小中学生は22・7%に達する。


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