京都 【WOMEN】育休MBA講座 子供を抱きつつ頭はフル回転

育児休業中の女性が経営を学ぶ「育休MBA」に注目が集まっている。大阪では昨年8月から「ぷちでガチ! 育休MBA講座」がスタートし、定員を上回る盛況ぶりだ。毎月1回、約2時間の講座でMBA(経営学修士)の資格が取れるわけではないが、内容は本格的。復帰後のキャリアアップにも役立つことが期待されている。

 「見たことのないシュールな空間になってますが、今日はビジネスプランを作る発想法を体験します」

 乳児を連れて着席した女性24人を前に、京都大学産官学連携本部IMS研究部門の研究員、中原有紀子さんは、戸惑った表情を浮かべた。1月中旬、大阪市北区のグランフロント大阪にあるセミナールーム。受講する女性たちはみな、真剣な表情だ。

 同伴の乳児はだっこされてきょとんとした表情を浮かべたり、床に座り込んで遊んだり。その傍らで女性たちは4、5人のグループに分かれ、てきぱきと話し合いながら「幸せ」をテーマにした商品開発に向けた課題をこなしていく。

 この日初めて参加した京都府大山崎町の竹内真子さん(33)は、精密機器メーカーの海外営業部に勤務し、11カ月の次女の育休中。「長女の育休の時もこんな講座を探したけれどなかった。頭を使うリハビリにもなるし、同じ境遇の異業種の方が多くて楽しい」

 10カ月の長男と一緒に9月から参加する神戸市灘区の公認会計士、大田千恵さん(35)は「普段の仕事と直接関係はなくても、必ず仕事で生きてくる」と目を輝かせた。

 講座を終えた講師の中原さんは「彼女たちは発想が柔軟でコミュニケーション能力も高く、おもしろいものができそうな気がした。育児中の方は作業や段取りが異常に早く、見習うことが多い」と話した。

 *   *

 講座が始まったのは、昨年8月。次男の育休中の江崎グリコ海外企画室、赤坂美保さん(39)が東京で似た取り組みがあることを知り、「関西でもやろう」と呼びかけた。赤坂さんは前職を退職後、長男の出産前に大学院に入学。長男を育てながらMBAを取った経歴の持ち主だ。

 「本当にMBAを取るのはお勧めしません。子供を置いて授業に行かないといけないし、むちゃだった」と赤坂さんは振り返る。だからこそ、子供を抱っこしながら頭は使って一流の講師に経営学を学び、異業種の女性たちと人脈も築くスタイルにこだわった。

 ただ、女性たちがこうした学びを求める背景について、育休後コンサルタントの山口理栄さん(54)は「復帰後のキャリアアップへの不安から、何かできることをしなければという焦りの裏返しかもしれない」と指摘する。

 その上で、山口さんは「育休中は子供に向き合って特徴をしっかりと理解し、体調の整え方を把握するための時間の方が大切。こうした講座は本当に余裕がある人が参加する“オプション”として考えてほしい」と訴えている。

     ◇

《今週のキーワード・育自力》

 講座を取材して印象的だったのは、女性たちの意欲と「何かを学び取って帰る」といった向上心。ある女性は「1歳の息子に毎日キスしているが、もっと頭を使いたい。育児以外の話ができる友達がほしい」と話し、自分を育てる「育自」を強く望んでいた。

 復帰後は出産前よりも勤務時間が制限されることが多く、キャリア形成に不安を抱く女性は少なくない。向上心を持って「育自」を続けてきた女性たちがそれぞれの企業や組織に復帰した後、能力を生かして活躍できる環境が整っていることを強く願う。