京都本大賞、効果じわり 創設3年
2016年01月18日
京都本大賞、効果じわり 創設3年
京都本大賞、効果じわり 創設3年
若者の読書離れなどの影響で全国的に書店が減少する中で、京都の書店関係者が2013年から始めた「京都本大賞」の効果が徐々に表れ始めてきた。創設3年となり、店頭で大賞をとった本が売り上げを伸ばす。ネット販売や電子書籍の攻勢に対し、地域に根付く本屋の取り組みが読者開拓のモデルケースとして注目を集めている。
「京都の本なので賞をもらえたらいいなとは思っていた」。15年の京都本大賞に「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(宝島社刊)で輝いた七月隆文さんは笑顔で語った。
同大賞は、地元の人に読んでほしい京都を舞台にした小説を書店員と読者の投票で決める。創設に地元の書店が結集した背景として、本屋存続への危機感があった。京都府書店商業組合によると、加盟店数は10年前の246軒が現在は155軒に減少した。アマゾンなどの宅配や電子書籍の壁もどんどん高くなり、全国的にも減少傾向が続く。
厳しい状況下、毎年大ヒットを生み出す「本屋大賞」の成功がヒントとなった。最近は静岡県などで地域の小説を表彰する企画が出てきている。京都は文豪たちも小説の舞台にしてきた強みがある。第3回の対象本は37作品もあり、京都の地域性が色濃い作品が多くレベルも高かった。
京都本大賞に選ばれた作品は、売り上げを大きく伸ばしている。第1回大賞「珈琲店タレーランの事件簿」(岡崎琢磨)は受賞後、シリーズ4作目まで発刊された。第2回の「聖なる怠け者の冒険」(森見登美彦)は、受賞した一昨年11月の京都での月間売上高は前月の6・3倍に。第3回の「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」は大賞発表後、前月比2・7倍に伸びた。
大賞作品の著者3人は、いずれも学生時代を京都で過ごしている。岡崎さんと森見さんは京都大、七月さんは京都精華大出身。小説には住民の目線で飾り気のない京都がにじみ出る。慣れ親しんだ地名とともに情景が浮かぶのも、京都本大賞が地元の人々に受け入れられた理由だろう。
最近は読書好き芸人、「ピース」の又吉直樹さんの「火花」が芥川賞を受賞するなど、若者に読書に目を向けてもらえる素地が出てきている。京都本大賞実行委の洞本昌哉・ふたば書房社長は「3年目となり、ようやく軌道に乗りつつある。最近は、京都の小説を出した出版社からの売り込みも出てきた。娯楽産業の時間の取り合いを制していかなければ未来はない。読者と一緒に大賞を選んでもらうことで本に手を触れてもらう機会をつくれればいい」と話している。