京都 iPSの中間細胞作製に成功 京大、遺伝子操作しやすく

2016年01月12日

京都 iPSの中間細胞作製に成功 京大、遺伝子操作しやすく

京都 iPSの中間細胞作製に成功 京大、遺伝子操作しやすく

ヒトの体細胞がiPS細胞(人工多能性幹細胞)に変わるまでの中間段階にある「再プログラム化中間細胞」(iRS細胞)の作製に、京都大再生医科学研究所の多田高准教授と医学研究科大学院生の勅使河原利香さんらが成功した。遺伝子操作しやすい特長があり、謎の多いiPS化の過程解明や創薬応用が期待できるという。英科学誌に5日、発表した。

 グループは、iPS細胞作製に必要な4遺伝子をヒト体細胞に導入。4遺伝子の発現終了を待つ通常の手法とは異なり、遺伝子が発現している状態で、塊から細胞を取り出して培養した。これらの細胞は効率よくiPS化したため、iRS細胞と判断した。

 iPS細胞と比べ、遺伝子操作しやすいことも判明。遺伝子操作で遺伝性疾患のモデル細胞を作り、創薬研究へ活用できる。

 また、この特長を生かし、iRS細胞に蛍光遺伝子を導入して、iPS細胞に特徴的な「OCT4遺伝子」が発現する瞬間の撮影に成功した。iPS化の過程を調べる上でも貴重な成果という。

 多田准教授は「従来と比べ、効率よくiPS細胞を作製できる。基礎研究での応用に期待したい」と話している。


////
京都 iPSで白血病治療研究…京大など、新年度から

血液のがんである白血病をiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って治療する研究を、京都大などのチームが新年度から本格的に開始する。

 がん細胞への攻撃力が高い免疫細胞を、白血病患者自身のiPS細胞から作る計画で、京大倫理委員会の承認も得た。iPS細胞から作った免疫細胞でがんを治療した臨床例はまだなく、チームは動物実験などで効果が確認できれば、患者の体内に免疫細胞を入れ、安全性や有効性を検証する臨床試験(治験)を2019年にも始めたいとしている。

 iPS細胞から作るのは、「キラーT細胞」と呼ばれる免疫細胞の一種。がん細胞やウイルスなどの「敵」を攻撃し、細胞表面にある分子の違いで攻撃相手を見分ける。

 キラーT細胞を使ったがんの治療法は国内外で研究されているが、細胞ごとに攻撃する相手が異なるほか、培養して増やすのが難しいなどの課題があった。

 京大再生医科学研究所の河本宏教授らは、キラーT細胞をiPS細胞に変えても、元のキラーT細胞が持っていた攻撃する相手の記憶は残る点に着目。特定のがん細胞を攻撃するキラーT細胞を、無限に増殖できるiPS細胞に変化させて大量に増やし、患者の体に戻せば、がん細胞を効果的に攻撃できると考えた。
/////
iPS移植に最適の成熟度発見 京大

ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した心筋細胞の最も移植に適した成熟度を、京都大iPS細胞研究所の吉田善紀講師や舟越俊介研究員のグループがマウスを使った実験で見つけた。iPS細胞を使った心筋梗塞などの効果的な治療の開発につながる成果で、英科学誌サイエンティフィック・リポーツで8日、発表した。

 ヒトiPS細胞由来の心筋細胞を動物の心臓に移植する研究が世界で進んでいるが、定着率が低い課題がある。グループは、iPS細胞から心筋細胞に変化させる過程で、成熟度別に四つの細胞を作製してマウスの心筋に注射で移植し、それぞれの定着率を調べた。

 その結果、iPS細胞から心筋細胞へと変化させ始めてから20日目の比較的成熟した細胞が、最も定着率がよいことが分かった。心筋梗塞のマウスに20日目の細胞を移植すると心機能の改善がみられ、6カ月の観察期間では、最初の3カ月で増殖して次第に成熟し、心筋特有の構造を形成することも確かめた。

 今後、さらにブタなどの大型の動物でも実験する。吉田講師は「未成熟だと移植した心臓に定着しにくいが、成熟し過ぎていても増殖しくい。20日目の細胞は最も両者のバランスが取れていると考えられる」と話している。


/////
<iPS細胞>心筋シート、臨床試験へ…大阪大

重症の心不全患者をiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って治療する再生医療の実用化のため、大阪大の澤芳樹教授(心臓血管外科)らが2016年度に、シート状の心臓の筋肉「心筋シート」を移植する臨床試験(治験)の実施を国に申請する方針であることが分かった。17年度に治験を開始し、20年ごろの心筋シートの販売開始を目指すという。

 重症の心不全患者は国内に約10万人いると推定される。治験には、京都大の山中伸弥教授らが作製を進める拒絶反応の少ない他人由来のiPS細胞を利用する。直径数センチ、厚さ0.1ミリ程度の心筋シートを作製し、機能が衰えた患者の心臓に張り付けて効果や安全性を確かめる。患者自身のiPS細胞を使う場合に比べ、作製時間や費用を抑えられるメリットがある。

 澤教授らは既に、iPS細胞ではなく脚の筋肉の細胞から作ったシートによる治療に成功し、昨年、再生医療製品として条件付きで早期承認された。心筋とは性質が異なる筋肉のため重症度が進んだ患者には効きにくく、今回の心筋シートはより大きな効果が期待できる。

 iPS細胞の臨床応用は、理化学研究所などが14年、目の難病「加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)」の患者の網膜に世界初の移植手術をしたが、製品化に必要な治験としては行っていない。研究グループの福嶌五月・大阪大講師は「慎重に治験を行い、iPS細胞を使った世界初の再生医療製品としての承認を目指す」と話している。

/////
iPS使い白血病治療 患者の免疫細胞大量作製 京大が研究、今春から


血液のがん、白血病の患者の細胞から作製した人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使い、がんを攻撃する免疫細胞を大量に作る治療法の研究を、京都大再生医科学研究所の河本宏教授(免疫学)らのチームが今年春から着手することが11日、分かった。

 チームによると、今年4月以降、試験管内で細胞レベルの研究を始め、マウスなどの動物実験を経て、平成31(2019)年度にも治験を開始。安全性などを確かめたうえで、実用化につなげる。実現すれば、iPS細胞を使うがん治療法として初の事例になるという。

 今回の治療法は、白血病の患者から血液を採り、がんを攻撃する免疫細胞「キラーT細胞」を採取。この免疫細胞からiPS細胞を作製して再び免疫細胞へ変化させることでがんへの治療効果を探る。

 この治療法は、25年に開発した皮膚がん患者の免疫細胞からiPS細胞を作製する手法を応用。免疫細胞を増やすのは難しいが、iPS細胞なら大量に増やせる利点がある。チームは昨年10月、京大の倫理委員会から白血病患者の免疫細胞を使う承認を得た。

 河本教授は、「特に65歳以上の患者では白血病の治療法がなく、高齢者を想定した治療法の実用化を目指す。他のがんにも応用できる可能性もある」と話している。

/////



kyoto00glo at 06:17|PermalinkComments(0)