京都 議論 19歳女子学生に何が起きた? キャンパスで飲酒死亡

2016年01月08日

京都 議論 19歳女子学生に何が起きた? キャンパスで飲酒死亡…後絶たぬ悲劇、学内全面禁酒は〝特効薬〟になるか

京都  議論  19歳女子学生に何が起きた? キャンパスで飲酒死亡…後絶たぬ悲劇、学内全面禁酒は〝特効薬〟になるか

京都府立大で昨年12月中旬、1回生の女子学生(19)が学内での飲酒が原因で死亡する事案が発生した。飲んだのはウイスキーで、紙コップ2杯程度の分量だったといい、司法解剖の結果、死因は急性アルコール中毒と判明した。ただ、事故の経緯について大学側は「差し控えたい」と詳細を説明せず、17日付で学内での飲酒を全面禁止する措置をとった。学生の飲酒をめぐっては、これまで未成年に対する飲酒の強要や「一気飲み」を問題視する声がたびたび上がるものの、悲劇は後を絶たない。京都府立大の学内飲酒禁止措置は再発防止の〝特効薬〟になるか。

「安全教育を徹底」

 緊急記者会見は重々しい雰囲気の中で始まった。昨年12月17日午後5時、京都市左京区の京都府立大。築山崇学長は冒頭、「1回生の女子学生が意識を失い、死亡する重大な事案が発生した。詳細については警察で捜査中です」と説明を始めた。

 「学生が志半ばで人生を終えなきゃならなかったことになり、残念でなりません」

 「亡くなられた学生に心から哀悼の意を表するとともに、命を守る責任を果たすため、事実関係を確認し、2度とこうした事態を招かぬよう学内での飲酒の規制や点検の強化、安全教育を徹底することをかたくお誓い申し上げます」

 そう話し、深々と頭を下げる築山学長に、報道陣がカメラのフラッシュをさかんに浴びせた。

 その後、頭を上げた築山学長。続いて女子学生が死亡した詳しい経緯を説明するかと思えば、出てきた言葉は意外なものだった。

 「本人のプライバシー、ご家族への配慮、情報の確度の3点で、説明させていただく内容に制約がございます」

経緯の詳細説明せず

 大学側が報道陣に配布したプレスリリースは、学長が述べたおわびの言葉を記したA4用紙1枚だけ。女子学生が死亡した詳細な経緯には触れていなかった。

 当然、報道陣からは「女子学生らは何時ごろから飲酒していたのか」「死亡確認されたのはいつごろか」などと事実確認を求める質問が相次いだ。

 大学側の説明によると、死亡した女子学生は12月16日夜、学内の部室で10人前後の学生らとともに飲酒し、意識を失う状況に陥った。一緒にいた学生が119番し、救急搬送されたが、間もなく死亡が確認されたという。

 質問が相次ぎ、会見は約1時間に及んだ。しかし、大学側は「今後、詳細が分かった段階で…」と明確な回答を避ける場面が目立ち、最後まで詳しい経緯は明らかにされなかった。

後絶たぬ大学生の飲酒死

 学生の飲酒死は全国で後を絶たない。

 一気飲みの強要などは「アルコール・ハラスメント(アルハラ)」として、啓発活動が広がりつつある。ただ、クラブやサークルによってはいまだに〝古き伝統〟が受け継がれている場合もある。

 平成24年7月には東大テニスサークルの飲み会で、教養学部2年の男子学生=当時(21)=がアルコール度数25%の焼酎約1リットルを一気飲みし、急性アルコール中毒で死亡する事案が起きた。男子学生の両親は昨年7月、一気飲みを繰り返して倒れていたのに適切な措置をせずに急性アルコール中毒で死亡させたとして、当時の飲み会に参加したサークルメンバーのうち21人に計1億6900万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。

 訴えによると、男子学生は隅田川花火大会前日の24年7月27日夜、飲み会で一気飲みを繰り返し倒れ、翌日午前0時ごろ死亡した。メンバーは放置したまま飲み続け、救急車を呼んだのは午前2時すぎだったという。サークルでは、むちゃな酒の飲み方が常態化、両親は見殺しにされたと主張している。

 両親側の代理人弁護士によると、被告側の21人はいずれも法的責任を否定し、請求棄却を求めている。うち2人は「自分も酒につぶれていた」「飲み会に遅れて参加したので関係ない」と主張しているという。訴訟の行方が注目される。

 また26年8月、サークルの合宿中だった宇都宮大1年の女子学生=当時(19)=が飲酒後に死亡。24年5月には小樽商科大1年の男子学生=当時(19)=がアメリカンフットボール部のバーベキューに参加し、大量の飲酒後に死亡した事故もあった。

抜本的な解決策なく

 アルコールによる学生の悲劇をどう食い止めたらよいのか。大学側も悩みを深めている。

 今回、死亡事案が起きた京都府立大では、これまで部室内での飲酒は禁止とする一方、食堂など一部施設での飲酒は認めていたが、今回の事案を受けて、女子学生が死亡した翌日の12月17日付で学内での飲酒を全面的に禁止する措置をとった。

 さらに18日には、大学の公式ホームページ上に「急性アルコール中毒による死亡事故を受けて」と題するメッセージを掲載。学長名で未成年の飲酒や強要、一気飲みは行わないように?とする文書を出し、学生たちに注意喚起をした。

 こうした啓発活動は他の大学でも行われている。

 同志社大では、商学部で大学生として振る舞うべき姿を教える単位科目「アカデミック・リテラシー」と題する授業を行っており、飲酒をめぐる注意喚起を実施している。大学によると、来年度以降は「他学部でも同様の授業を受講できるよう検討を進めている」という。

 また、京都大では昨年11月の学園祭で、酒を販売する際には20歳以上かどうか身分証明書の提示を求める対応をとった。立命館大は新入生を中心に酒のマナーやアルハラなどを記した冊子を配布し、注意喚起を促している。

 ただ、大学の担当者からは、啓発を続けたり、学内での飲酒を禁じたりしたとしても、結局のところ、飲酒死を根絶する抜本策にはならないのではないかという声も上がる。

 ある大学の担当者は「最終的には学生たちを信じるしかない」と話した。



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