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2020年09月30日

携帯料金引き下げは本当にできるのか。賛否両論がうずまく理由

携帯料金引き下げは本当にできるのか。賛否両論がうずまく理由



 ◆デジタル庁創設に向けて休日返上で政策実現へ

 菅内閣始動から間もなく2週間。首相自ら掲げた「働く内閣」の看板どおり、政権は政策実現に向けて急ピッチで動き出している。

 菅首相の指示を受けて田村憲久厚労相は不妊治療をめぐる助成の大幅拡充に向けて調整。意見が殺到して一時停止したが、河野太郎行革担当相は「縦割り110番(規制改革・行政改革ホットライン)」を設置して意見を集約中だ。武田良太総務相は携帯電話料金引き下げの具体策を検討中。

 菅首相も出席した9月25日の作業部会では来年中を目指す「デジタル庁」創設を待たずに、行政デジタル化を前倒しで進めることが確認された。矢継ぎ早に政策を打ち出し、実現に向けて動き出すさまは、アベノミクスをぶち上げた第2次安倍政権発足当初を思い起こさせる。

 こうした動きに呼応するように、安倍辞任会見当日に急落した日経平均は、新政権発足にかけて高値を回復した。「スガノミクス」に対する期待の表れと言えよう。民間シンクタンクのエコノミストが解説する。

「菅政権の目玉政策は、行政のデジタル化に携帯電話料金の引き下げ、地銀の再編、中小企業法の見直しなどでしょう。アベノミクスでは金融政策と財政政策を柱に経済成長を促そうとしましたが、スガノミクスでは安倍前首相が手をつけられなかった構造改革に重きを置いています。

 その改革路線には、小泉政権時代の竹中平蔵氏(現・東洋大学教授)の影響が色濃く見える。デジタル化により行政の効率化を促進し、地銀の再編による資本力増強でFintechなどの新たなシステム投資を促し、競争力を高める。税制面で優遇される中小企業に関する法律を見直して再編を促し、企業の国際競争力を高めるといった具合です。

 典型的な新自由主義的政策ですが、こうした政策は海外投資家から非常にウケがいい。それが株価に反映されているといっていいでしょう」

◆日本の携帯電話料金は本当に高いのか

 ただし、どこまでスガノミクスが実現可能かは疑問だ。特に、携帯電話料金の引き下げには、政策的な問題点もある。ケータイジャーナリストの石川温氏が話す。

「菅首相が言うように、確かに大手キャリア3社は20%以上の利益率を維持していて料金の引き下げ余地がありそうです。しかし、その分、多額の設備投資を行っています。そもそも料金が高いと言いますが、民間シンクタンクのICT総研の調査では、独仏英と比べれば日本の通信費は高いものの、アメリカや韓国と比べれば安い。

 一方で、国内キャリアの4G接続率は韓国をも上回り、通信速度では韓国に次いで2番目。欧米と比較すると、通信速度は倍近く速いんです。これは国内キャリアが通信の質の向上を目指して、設備投資を行ってきたからにほかなりません。ドイツでは地下鉄に乗ったり、郊外に行くと繋がりにくくなりますが、日本では地下鉄車内でも動画が見られるし、富士山の頂上から写真を送信することもできる」

◆「可処分所得の増加」を目指すスガノミクス

 つまり、「海外より高い」ことは料金引き下げの理由としては薄弱だというのだ。そもそも政府による料金引き下げ圧力は矛盾をはらんでいるとも言える。

「利益率が高すぎると言いますが、大手キャリア3社は5Gの実現に向けて年間5000億円もの設備投資を行っています。料金の引き下げ圧力は、5G投資の遅れを招き、菅首相が推進する行政デジタル化にも影響を及ぼすことでしょう。5G通信網はデジタル化社会におけるインフラの中核となるものですから。その点で大いなる矛盾をはらんだ政策です。

 そもそも、政府が『料金を下げる』というのは逆効果。利用者が『今後、安くなるなら多少高くてもこのままでいい』と考えて、格安スマホなどへの乗り換えをやめてしまうからです。すでに契約“2年縛り”の違約金上限の大幅な引き下げやナンバーポータビリティの導入により乗り換えの手間とコストは減っていますが、さらなる競争環境の整備を通じて値下げを促すのが本来あるべき政策です」(石川氏)

とはいえ、携帯電話料金の引き下げが大きな経済効果を生むのは事実。民間シンクタンクのエコノミストによると「1割の引き下げにより家計全体で6700億円以上の負担軽減になり、4割の引き下げなら消費税1%分の効果を生む」という。

 実は、この家計負担の軽減はスガノミクスを読み解く上でのキーワード。官邸関係者は「菅政権の政策に共通するのは、可処分所得の増加にある」と話すのだ。

「構造改革で労働生産性の低い業種から高い業種への人材流入を促して給与所得を増やし、行政のデジタル化や通信料の引き下げ、不妊治療などの高額な医療費が発生する分野への助成を高めて、可処分所得を増やす。仮に額面の給料が上がらなくても、生活の向上を実感できる社会にするのが狙い。一見、バラバラに見えて、生活に密着した政策なのです」

◆カギになるデジタル庁の創設

 実はそのためのカギになるのがデジタル庁の創設だ。政治ジャーナリストの藤本順一氏が話す。

「その目的は縦割りだった省庁のシステム一元化による業務効率化にとどまりません。マイナンバーカードの普及を通じて健康保険証や運転免許証など個人を識別する規格の統合を目指し、カード一枚で行政手続きが済むような行政サービスの向上にあります。住民記録と病歴を結びつけることができれば、オンライン診療が容易になり、別の医療機関で受診する際にも二度手間が省ける。

 公的サービスの利便性が向上する一方で、銀行口座とも紐づけできればコロナ禍で不備が生じた給付金の受け取りもスムーズになる。政府としてはあらゆるお金の流れが把握できて税の取りこぼしを防ぐことができるうえに、情報の管理を一元化できるというメリットがあり、企業にとっても省庁横断的な行政との連携が取りやすくなるというメリットがある。

 スガノミクスのあらゆる政策と、デジタル庁創設は繋がっているのです。唯一の問題点は、個人情報の保護。監視社会への移行だとの反発は必至でしょう。実際、’02年に運用を開始した住基ネットも、大きな反発を呼んで、ほぼ浸透しないまま’15年に運用を停止しました。その点で、行政デジタル化に向けた各法案を取りまとめて提出するとみられる来年夏の通常国会は見もの。日本にとっての大転換期となる可能性があります」

 なお、「働く内閣」を掲げる菅内閣は成果をあげることを重視しているため、「早期解散の可能性は薄れた」(藤本氏)という。となれば、東京五輪後の自民党総裁選を経て、衆院任期間近での解散が濃厚に。それまでにスガノミクスはどれだけの成果をあげられるのか?

 ひとまず動き出したばかりの政権を注視したい。

◆<菅政権が掲げる主な政策の数々>

●新型コロナ危機の克服
感染拡大防止と経済活動の両立を優先に取り組む。来年前半までに全国民にワクチンが行きわたるよう準備を進めるほか「GoToキャンペーン」継続で地方経済と観光産業を下支え

●携帯電話料金の引き下げ
武田総務相は「1割値下げ程度じゃ許さない」と発言し、欧州並みの4割値下げを目指す方針。大手キャリア3社に対する電波利用料引き上げも視野に圧力をかけていく?

●地銀再編の促進
菅首相は「地銀の数が多すぎる」と発言しており、全国に100以上ある地方銀行・第2地銀の再編を促す見込み。「ドコモ口座」をめぐる預金の不正引き出し問題では、地銀のセキュリティの脆弱性が浮き彫りに

●中小企業法の見直し
中小企業に対する税制上の優遇措置などを見直すことで、「中小企業の再編」を促す狙い。ただし、国内における中小企業の比率は99.7%にのぼるため、反発は必至か

●最低賃金引き上げ
他の先進国と比べて低いとされる日本の最低賃金(今年度全国平均時給902円)を、早急に1000円に引き上げられるよう菅首相は田村憲久厚生労働相に指示を出している

●デジタル庁の創設
庁の創設と並行して行政デジタル化を加速させる一方、マイナンバーカードの普及率を高め、事務の効率化や住民サービス向上を図る。口座情報などと紐づけられる個人情報管理に課題も

●不妊治療の助成制度拡充
少子化対策の一環として、一回50万~60万円ほどかかる体外受精や顕微授精に対する助成額を引き上げる一方、自由診療となっている高度な治療への公的医療保険の適用を目指す

◆東京追加で10月以降の「GoTo」効果は1兆円!?

 すでに運用を開始している「GoToトラベル」。実質的に旅行商品を50%、外食やイベント価格を20%引き下げる効果のある同キャンペーンの“東京除外”が10月から撤廃されると、「1兆円程度の旅行需要の押し上げ効果が見込まれる」(民間シンクタンクのエコノミスト)という。10月中旬以降には商店街の支援を目的とした「GoTo商店街」を開始する見込みだ。



kyoto00glo at 06:05│Comments(0)

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